イミテーション・ゴールド

俺が通っていた、荒廃した田舎の公立中学校に、真面目を絵に描いたようなKという同級生がいた。 勤勉で素直、明るい性格の、野球少年だった。部活を引退してからは机にかじりついて勉強し、県内3番手の高校に入学した。 そして、すぐに留年したと風の噂で知…

酒と煙草と漢と女

俺は酒も飲むし、煙草も吸っていた。 今でも飲み続け、かつて吸い続けていたのは、好きだからだ。それは間違いない。化学物質にそう思わされていただけかもしれないが、それでも紛れもなく嗜好品だった。 ただ、俺が酒と煙草を初めて手に取った時、そこに背…

ヒロインは気狂い

俺は女関係で死ぬほど苦労してきた。 モテないわけではない。 俺には同性人気こそが本物の証という確固たる信念がある。時には女にドン引かれようが、男社会内での称賛を追い求めてきた、典型的なホモソーシャル人間だ。それでも尚、女に困ったことはない。 …

酒の飲めないバーテンダー

俺は手術見学が何より嫌いだった。 何をしているのか分からないから退屈なのだと思い、解剖や術式を学んでから手術を見るようにしてみた。が、半ば予想していたことだが、依然全く面白くない。 まともな手術は、ダイナミックな出来事がほとんど起きない。例…

銀の龍の尾を追って

今の俺の姿を見ると想像もつかないと思うが、昔はとにかく病弱で、ことあるごとに風邪をひいては、近所の小児科の世話になっていた。 そこは80代くらいのおじいさんが院長で、待合室の本棚には沢山の漫画が並べられていた。 院長自身が選んだのかは定かじゃ…